あの子背が伸びた今の僕を見たらどんな顔するんだろう/僕は背が伸びた今のあの子を見たらどんな顔してしまうんだろう

地下鉄のホーム、車道を挟んだ向かいの歩道、通学路だったあの道、マンションの前、僕は黒髪を伸ばしている女性を見るとついかつて彼女だったあの子を幻視してしまう。


あの子は当時小学生だった。華奢な体に小さな手。声は落ち着いていて、いつも何かを話していた。
小学生の僕は絵をかく少年だった。休み時間はいつも自由帳に迷路を書いたり当時好きだったアニメの落書きをしたりしていた。彼女も絵を描いた。2人は共通点が多かったのだろう。いつの間にか両思いになっていた。ある日、休み時間に彼女がおもむろに僕の席に近づいてきて、突然好きです付き合ってくださいと告白した。僕はOKして、2人は小学生なのに付き合うことになった。隣にいたり、照れながらお互いに質問しあった。手も繋いだ気がする。キスはしなかった。関係は中学生になるまで続いたが、僕は中学生の頃からアトピー性皮膚炎が酷くなり、内向的になっていじめも受けた。
変わった自分を見て彼女の想いも変わってしまった。彼女は僕と話すことすら拒絶するようだった。
クラスが変わり、顔を見ることもなくなってこの関係は終わってしまった。








それから7年が経った。それでも僕は未だ彼女の事が好きだ。あの綺麗な長い黒髪、小さな手、綺麗な瞳、歩き方、赤らめた頬から伝わってくる熱。彼女はかつて私のどこが好きなの?と質問してきたことがあった。そんなもの全てに決まってる!どんな酷いことをされてもどんなに汚い姿を見ても、何をどうやったってどうしたってどうしようもなく愛してしまう自信があった。僕は彼女のことが大好きだ!

しかしもう7年も経ってしまった。彼女はもう自分のことなんてとっくに忘れてしまっただろう。背だって伸びただろう。手だって大きくなった。そして新しく恋をしたかもしれない。僕のことなんてすっかり忘れて、結婚して、子供も出来るのかな。そして絶対に幸せになるんだろう。必ず。







それでも僕は未だ彼女の事が好きなのだ。どんな美人に告白されても、この想いは拭えないだろうという確信がある。

もし再び偶然会ったらなんて言えばいいのか?
「僕はあなたのことが今でも好きです。」と言うのはなんだか本心ではない。
どちらかというと「僕はあなたのことを憎んでいます。」のほうが近いかもしれない。

拝啓 あの子、僕はあなたのことを憎んでいます。 敬具
僕は背が伸びた今の君を見たらどんな顔をしてしまうんだろう